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銀魂
A
「おぉ、トシ!総悟!」
屯所に帰ると真っ先に近藤が飛んできた。
あとからぞろぞろと一般隊士もやってきた。
みんな口々に「副長お帰りなさい」やら「巡回お疲れさまでした」と言っている。

「副長!」
その群集の合間を縫うようにして山崎が姿を現した。
「どうした」

「もうすぐ宴会が始まるので着替えて待っていてください。呼びに行きますので」
笑顔でそう告げる山崎に頷くと土方は自室へ向かった。

土方がいつもの黒い着流しに着替え終わり煙草を吸っていると、自室の襖がノックされた。
「副長、準備が整いました。宴会場へどうぞ」
「あぁ」


###

異様に静かな廊下を山崎について歩く。
いつもの賑やかな屯所からは想像もできないような静けさに、何となく緊張を覚える。

「…何かあったのか?」
自分の数歩前を歩く山崎に声をかけるも返答はない。
「おい…ッ」

長い沈黙にしびれを切らした土方が山崎の肩に手を伸ばしたとき、山崎がタイミングよく振り返った。
「着きましたよ」
「あ…あぁ…」

行き場をなくした右手をさり気なく下ろす。
「さ、どうぞ」
笑顔で後ろに下がる山崎に軽く手を挙げると襖を開けた。

「副長!おめでとうございますッ!!」
「…!?」
襖を開けた瞬間己に降り注ぐ色鮮やかな紙テープ。
顔を上げるとなんとも癖のある字で書かれた『祝・聖誕祭』の垂れ幕。

「よォ、また会ったなァ…」
呆然としていると、隣から聞き覚えのある声と共に肩に腕が回ってきた。
「高杉!?」

「いつも熱烈に追い回してくれる礼だ」
いつも通りの不適な笑みを浮かべながら襟合わせから手を入れる高杉。
「てめ…ッ何やってんだ!」

土方の焦り声に高杉の左右から刀が突き出た。
「なぁにやってくれてんのチビ助」
「あまり趣味の良い見せ物とは言えぬぞ変態」

「桂…!?それに万事屋もッ」
2人に両側から掴まれた高杉は潔く土方の合わせから手を引いた。
「チビじゃねェし変態でもねェ…。これを確認したかっただけよ」
そして煙管を2人に見せつけるように差し出す。

「土方くん、煙管なんて吸ってたんだ?俺ァてっきり煙草だけだと…」
銀時の驚いた声に満足げな笑みを浮かべ、一度くるりと回すと土方の口に突っ込んだ。
「それは…!」

その様子を見ていた沖田が思わず声を漏らした。
「クク…ッ。教えてやるよ。これァな…俺が昼間土方にやったもんだ」
見ると土方の顔はどんどん赤くなっていく。

「いや…それはだな…ッ」
あたふたと支離滅裂な言葉を述べる土方に銀時と桂がぷつりと音を立てた。

「高杉ィィイ!!覚悟はできてんだろうなァァ!」
「血祭りだァァア!」
銀時は木刀を、桂は真剣をそれぞれ構えたとき沖田が叫んだ。

「旦那方、落ち着きなせェ!」
「…総悟?」
唖然と見守る隊士たちの間を抜け、土方に近づく。
「今日はアンタらに土方さんを取り合ってもらうために呼んだんじゃありやせん。土方さんに楽しんでもらうために呼んだんでさァ」

急に大人しくなるふたり。
沖田は高杉の手から煙管を引ったくった。
「これは俺が預かりますぜ。無益な喧嘩を引き起こす元凶にしかなりませんからねィ」

懐に煙管を仕舞うと土方の袖を引き席に案内する。
「さぁて!主役も揃ったところで…乾杯!!」
土方が腰を下ろすと近藤がジョッキを持って立ち上がった。
「乾杯ッ」

いつの間に来ていたのか、隣に座る高杉にジョッキと数種類の酒を差し出される。
「あぁ…悪ィ」
その中から瓶ビールを受け取るとジョッキに並々と注ぎ一気に飲み干す。
「いい飲みっぷりじゃねぇかァ」

高杉が楽しそうに笑う。
「ていうか…何でいるんだよ、お前」
「俺は借りは返すぜ。言っただろ?いつも熱烈に追い回してくれる礼だと。正直、銀時やヅラまでいるとは驚きだがなァ…」

片目を細めて少し離れた席に座る幼なじみたちを眺める。
そして己のグラスに残っていた酒を飲み干すと、土方の襟を掴み自分の口元へ引き寄せた。

「…誕生日おめでとう」




10/05/06
土方総受けのほのぼの誕生日ギャグを目指したのに途中から明らかにずれてしまった。
しかも間に合わなかった。
何となく『沖→高(→)←土←銀・桂』な雰囲気。
特に意識した訳じゃないのでお好きに解釈してくださって結構です。

5月いっぱいはフリーです。
が、報告があると嬉しいです。


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